気が散るものは片付けよう。
「マシュマロ実験」っていう、ちょっと変わった名前の実験がある。
スタンフォード大学のウォルター・ミシェル博士が、186人の4歳の子を対象に行った実験だ。
まずは4歳の子を一人ずつ部屋に通し、皿にのせたマシュマロを1つ置く。
そして実験担当のお姉さんはこう言うんだ。
「そのマシュマロは君のよ。
ただし15分して私がもどってきた時にまだマシュマロがあったら、もう1つあげるからね」
部屋に残された4歳の子と1つのマシュマロ。
もちろん15分ガマンしてもう1つもらいたい。
でも目の前にあるのは甘くてふわふわした魅力的なお菓子、マシュマロだ。
「今すぐ食べたい!」という欲求に、彼らは打ち勝つことができるのか。
――大半の子はマシュマロの魅力に勝てなかった。
彼らがたえられた時間は平均でたったの2分。
お姉さんが部屋を出た瞬間に食べてしまった子もいるぐらいだからね。
でも15分を見事にたえきった子も40人ほどいた。
で、実験の映像を分析してみると食べちゃった子とガマンできた子の間には、はっきりとした違いが見つかったんだ。
じっと見つめたり、においをかいだり、手でなでたりしてマシュマロに注意を向けた子の多くはガマンすることができなかった。
けれど後ろを向いたり、指で数をかぞえたり、部屋のすみで体操したりしてマシュマロから気をそらした子は15分をたえきることができた。
この実験が教えてくれること。
それは誘惑に負けない方法だ。
誘惑してくるものを見ないようにして、他のことに気持ちを向ける。
そうやって誘惑を断ち切ることが大切だ。
さて、君のいる部屋を見てみよう。
TVに漫画、ゲ―ム、インターネット、そしてスマホ……
最近は誘惑してくるものがとても多いよね。
しかも誘惑のパワーは格段に強くなっている。
より魅力的なものを追求してきた結果だから、これはまあ仕方がない。
問題はその誘惑に負けないで勉強できるかってことだ。
他のことが少しでも気になると、僕らの集中力は格段に落ちてしまう。
TVが目に入る「9時から見たいドラマがあったな」
漫画が目に入る「続きはどうなるんだろう」
スマホが目に入る「LINEが来てるかも」
かといって誘惑するものがあふれている環境だと気をそらすのは難しい。
最近は大人向けの有料自習室が流行っているそうだ。
誘惑から気をそらして集中するっていうのは、大人でもタイヘンってことだね。
もし君が本気で集中したいと考えているなら、教科書とノートを広げる前にやることがある。
いつも自分が勉強している場所に座ってまわりを見てみよう。
漫画やゲームなど、ちょっとでも気になるものが目に入るようなら片付けたほうがいい。
大きめの箱を用意してすべてつめ込んでしまおう。
完全に集中できる場所。
そこは君にとって大切な場所になるはずだ。