姿勢正しく勉強しよう。
「うちの子、とにかく姿勢が悪くって……」
入塾したばかりのお母さんが気にしていたのがわが子の姿勢。
家で勉強を始めると、すぐに姿勢が悪くなってしまうそうだ。
漢字や計算が大事なのはわかるんだけれど、塾ではまず姿勢をみてほしいとのことだった。
僕もこのお母さんの考え方には大賛成だ。
姿勢が悪いまま勉強し続けるっていうのは、みんながクロールで泳いでいるのに自分だけ犬かきで泳ぎ続けるようなもの。
効率が悪すぎて、いくらがんばっても差が開くばっかりだ。
だからといって「姿勢を正しなさい」と注意するだけではなかなかうまくいかない。
悪い姿勢が体に染み付いている子の場合は特にね。
姿勢について何度も注意されてきたので「ああ、またか……」と聞き流されてしまうだろう。
大切なのは「なぜ姿勢をよくしなければならないのか?」という理由もあわせて伝えること。
たとえばうつぶせになってしまう子に、僕はこんなふうに声をかけている。
「ほら、ずいぶん背中が丸まってる。
テキストと目の距離がずいぶん近くなってるよね。
それじゃ、テキストのこのへんしか見えてないでしょ?
さっきから体が右へ左へ動いているのは、そのせいだよ。
姿勢が悪いせいで、体ごと動かして見るのが癖になっているんだ。
そんなよけいな動きをしていたら、スピードは上がらないしミスも増えちゃうよ。
テストで答えを写し間違えて×になることも多いんじゃない?
原因は姿勢の悪さにあると思うよ。
――じゃあ、背中を伸ばして座ってみようか。
イスもちゃんと引いてね。
どう?
テキストもノートも見える範囲が一気に広がったでしょ。
目をちょっと動かすだけで、問題がすべて読めるしノートも書けるよね。
こっちのほうがスピードが上がるし、ミスも減る気がしない?
それじゃ、これからは背中を伸ばしてがんばろうね!」
背中を伸ばすと、視野が広がり勉強の効率が上がる。
もちろん理由を伝えたからといってすぐに正しい姿勢が身につくわけじゃない。
けれど、姿勢に対する意識は変わる。
意識が変われば、あとは自分で気を付けたり僕らに指摘されたりするうちに正しい姿勢が当たり前になっていく。
ちなみに、姿勢を正す理由はパターン別にいくつもある。
体がななめになってしまう子。
足を組んでしまう子。
利き手ではない方の手をぶらりと下げてしまう子。
これからもその子に合った理由を添えてビシビシ言っていくよ。
正しい姿勢には、勉強を効率よく長時間続けるための知恵がつまっている。
これを使わないのは、ほんとうにもったいないからね。